[04]04(2)6.ウェスト・コースト・オフェンス
はい、じゃあコンビネーション・パスの進化形とも言えますウェスト・コースト・オフェンスについてお話してみましょう。
なんかその名前よく聞くー!
そうだね、一時期ほどどのチームでもやってるっていう感じじゃなくなってきたけど、まだまだオフェンスの一つの主流だね。
西海岸…西ってことは…日本海…カニ…カニ!
ここでひとまず注意を。
もともと「ウエスト・コースト・オフェンス」っていうのは、パスの種類のことじゃないんだ。
オフェンス全体のコンセプトの名前って感じなんだけど、とりあえずここではその「ウエスト・コースト・オフェンス」で良く使われる、特長ともいえるようなパスってことで、この名前を使っちゃうことにしましたー。
コンビネーション・パスは、ディフェンスの動き方によって、QBがパスを投げるレシーバーを選ぶってものだったね。ウエスト・コースト・オフェンスでは、それをさらに一歩進めてるんだ。ディフェンスの動き方によって自分たちも走るコースを変えたり、さらには自分たちの動き方でディフェンスを釣ったりして、フリーになるレシーバーを積極的に作り出しちゃおうっていう考え方でデザインされてるんだよ。
つまりはディフェンスのいないほうに走ればいいんでげすな!?
まあそうなんだけど、それだけじゃ、結局ついてこられちゃうでしょ。だから色々と細工をしてあるんだ。
代表的なプレーはこんな感じ。
FLは20ヤードくらいまで奥に走ってく。TEは10ヤード辺りでサイドラインに向かって走る。RBはLOS付近をサイドライン方向に走る。
ここからディフェンスを見ながら変化をつけたりするんだ。
これに対してディフェンスはどーする?
こんな感じの対応になるのが多いね。
まずCBはロング・パスを警戒しないとだから、FLについて奥のほうにいくね。すると、SSはRBとTEの両方が目に入ることになる。
SSもやっぱりロングパスから警戒するのがセオリーだから、よりフィールドの深いところにいるTEの方を守ることが多いね(オレンジの動きをとるわけだ)。ってことは、SSは10ヤードよりも後ろまで下っていかなきゃいけない。
そうすると、LOS辺りを走っていくRBをカバーするのはLBってことになるよね。こうなると、ほとんどの場合、RBはLBよりも走るのが速いから、LBを振り切ってパスを捕ることができる。RBがパスを捕った場合は、その時点では10ヤード辺りにいるSSに追いつかれるまでに、5ヤードくらいはゲインできるってわけ。
じゃ、SSがTEについていかずに、RBをカバーしにいった場合(赤の動き)は、どうなるかな?
TEがフリーになっちゃうじゃん!
そうだね、TEにパスを通せば10ヤード以上のゲインができるよね。
ディフェンスの動きによってパスコースを変えるってのはどんな感じなんでげすか?
まず、さっきの基本的なディフェンスの対応はマン・ツー・マンとか、3ディープのゾーン・カバーのときね。
じゃあ2ディープのときにどうなるか考えてみよう。
パスカバーの種類については後で詳しく見るから、とりあえずここでは、2ディープでは浅いゾーンにディフェンスの選手がたくさんいるんだって思ってね。
ってことは、オフェンスはさっきと同じ動きだと、TEもRBもカバーされちゃうんだ。だから、プレーがはじまってからそれぞれのレシーバーは、2ディープだと判断したら自分の走るコースを変化させないといけない。
FLは遠くから追ってくるSSから逃げながらサイドライン方向へコースを変えれば、誰もいないゾーンにいくことができる。TEはゾーンの切れ目でフックに切り替えて立ち止まればフリーになれるね。
え、レシーバーもディフェンスの動きを知ってないといけないんすか…?
そうだよ、ときどきレシーバーがひとりもいないところにパスが飛んでいって、インターセプトされちゃったりってことがあるでしょ。
あれは、QBとレシーバーの判断がずれちゃってるんだね。QBは右に行くと思ってパスを投げたのに、レシーバーは左にパスが飛んでくると思ってコースを変えちゃった、みたいな感じね。
うう…むずかしい…
このままじゃ、あたい、QBになれない…
まあ最初からそんなに難しく考えることないよ。
ウエスト・コースト・オフェンスはこんな感じで、ディフェンスの手の回りきらない場所を、オフェンスが自分たちの動きでつくっちゃおうっていうのがコンセプトの一つなんだ。そのためにフィールドを横幅いっぱいに使ってディフェンスの人口密度を減らすってのも特徴だよ。
それからウエスト・コースト・オフェンスは、「短いパスをラン・プレーのように使う」って表現されることもある。全体的なコンセプトとして、短いパスを確実に通すのを繰り返してオフェンスを進めていくから、そんな説明のされかたもするんだ。ディフェンスも分かってはいるんだけど、やっぱり長いパスを優先で守らないと危ないから、短いパスはどうしても通されやすくなっちゃうんだね。
その分、それぞれのゲインは普通のパスに比べると短いけど、長いパスよりも危険は少ないし、成功率も高くなる。大体5~10ヤードくらいのパスが多いから、1stダウンから3rdダウンまでの3回のプレーのうち2回を成功させればファースト・ダウンがとれるっていう計算になるよね。その場合のパスの成功率は66%、シーズンを通して66%ってのはちょっと難しいけど、66%いったドライブでは点が取れるって考えれば、まあ現実的な数字だよね。
ウエスト・コースト(西海岸)っていう名前の由来は、最初に使い始めたのがアメリカ大陸の西海岸、サン・フランシスコを本拠地にしてる49ersだったところからきてるよ。現在ではウエスト・コースト・オフェンスを基本にするチームはたくさんあるし、もちろん西海岸以外のチームも使っているけどね。
- 前のページ:
- [04]04(2)5.コンビネーション・パス
- 次のページ:
- [04]04(2)7.スクリーン・パス