ねえ、ラインのはしくれとして、聞いておきたいんだけど。
ときどき、ラインが、ラインじゃないところにいるよねえ…?
うん。言わんとするところはなんとなく分かるぞ。
つまり、本来はインテリア・ライン(LOS上の7人の中の、両端以外の内側の5人)であるはずの、50~79番までの選手が、TEの位置にいたり、バックフィールドにいたりする、っていうことだな?
そう。それ。
ラインはこの黒いところにいなきゃいけないのに…
ここにもいたり、
こんなところにいたりするでしょ。
これってアリなの?
本当はダメ。
ただし、プレー前に審判に申告すればOKなんだよ。
審判は全体にマイクを使ってアナウンスする。
「このプレーでは68番は有資格だよー」って感じにね。有資格ってのは、ボールを触っても良い選手ってこと。
えー!?そしたらパスも捕れるのー?
うん、OKだよ。まあ普段練習してないから、パスが投げられることはあんまりないけどね。
とにかくブロックの強い選手を並べて押し切ろうってときなんかに使われる。もちろん、プレー・アクションっていうこともあるよ。
いつもならTEがいる位置に本職のラインを置いて、その外と後ろにTE、なんてこともできちゃうよ。
怖いじゃん、ずるいじゃん。。。
だが、アリなんだよ。
これもアリなの?っていうことで言えば、アンバランス・ラインっていうのもあるね。
スナップする選手であるセンターは、普通まんなかにいるよね。でも、別にルールで決まってるわけじゃないんだ。中央にいたほうがスナップを邪魔されにくいし、左右どちらにでもプレーがしやすい、読まれにくいってだけなんだね。
だから、ここにいてもいい。LOSに7人のラインがいればいいんだからね。
えー!? そうだったんでげすか?
でも、これじゃQBがすぐにタックルされちゃいませんけ?
そうだね、だからあんまりやらないし、やるとしてもQBはすぐにボールをRBに渡して右に展開するプレーになるのがほとんどだろう。
でもディフェンスが対応を間違えて、上の図みたいに、いつもどおりセンターを基準に並んじゃったら、プレーが行く方向でオフェンスのブロッカーがたくさん余っちゃうよね。
だから、ディフェンスもこういうフォーメーションがきたときの対策は一応つくっておかないといけない。
さらに、ラインはLOS上にいなきゃいけないけど、並んでないといけないってこともないんだよ。スプリットエンドみたいに、みんなが離れて配置されててもいいんだ。
ロンリー・センター・フォーメーションとかって言われるのがある。LOSの右端にいるのがセンターね。
なんか離れてるねー! 意味わかんねー! テンションあがるー!
ここからどういうプレーするのー!?
その前に、スナップっていうのにも注意。
スナップは、センターの足の間を通して後ろにボールを渡すもの、ではない。ボールを動かして、プレーをはじめることをスナップっていうんだ。
だから、ロンリー・センターでは、ディフェンスの対応を見て、
もしセンターの方にディフェンスがぜんぜんきてなかったら、パントのときみたいに真後ろにロング・スナップをして、受け取ったバックがそのままランナーになったり、
逆に、センターの方に必要以上にディフェンスが集まってきちゃったりしてたら、斜め後ろにスナップしたりする。この場合は足の間を通すことはなくって、ほとんど横に投げてるような感じだね。
それで、スクリーンみたいなプレーになる。
参考にどうぞー。
そんなんでいいのー?
練習するー!
まあ、ディフェンスが正しく対応すれば、そんなに成功することはなくなっちゃうけどね。
だから、とりあえずセットしてみて、ディフェンスが慌ててなかったら元に戻して普通のプレーをするっていうのが多いかな。FGのときなんかにも、センターとキッカーとホルダーだけが離れてセットしてみたりってこともあるよ。
ついでに紹介しちゃえば、これもアリだ。
ずるくね?
ずるいわけじゃないぞ、ルールをちゃんと知ってるかどうかの差が勝負をわけることもあるんだぞ。
ペイトリオッツ時代のベリチックHCなんかは、こういう重箱の隅をつつくような、これってチートじゃねーのかよギリギリじゃねーか!ってプレーもよく使ってたね。
常に新しい、今まで人が思いつかなかったようなプレーがないか、ルールを利用できるところはないか考えてるんだろうね。まあ、あの人の場合は本当のチートも実際にモゴモゴ…(略)
ベリチーは、なにを、したんだい?
あれは〜2015年の〜プレーオフの〜レイブンズ戦の〜ことじゃった〜
ベリチックが利用したのは、本来はパスを取る資格がないラインを申告してパスが取れるようにするのと逆のルールだったんだ。
つまり、もともとはパスを取っても良い選手、TEとかWRとかをOLの位置にセットさせて、このプレーではこの選手は無資格ですって申告する方法ね。
普通のアライメントはこんな感じだよね。
□はセンター、○はその他の選手。グレーはパスを取ってはいけない無資格、白はパスを取っても良い有資格を現してるよ。わかりやすいように番号も入れてみた。
番号が赤くなってるのは、審判に申告が必要な選手ね。
OLの選手をTEの位置で使うときには、普段は無資格の選手を、このプレーでは有資格ですって申告することになる。
おう、それは見たことある!
反対に、通常は有資格の選手をパスを取ってはいけない位置で使うこともできるんだ。これもプレーの前に審判に申告する必要があるよ。
まあ、OLが怪我しすぎて仕方なくTEを代わりに使うとか、あんまり使われることはなかったルールなんだけど。
でも、ベリチックはこれを利用したわけ。
こんな感じのフォーメーションで、84番のWRを無資格ですって申告した。
すると、通常の左のオフェンス・タックルの位置にいるTEはパスを取っていい有資格で、スロットWRの位置にいる84番は無資格という状況が生まれるんだ。
しかも、審判のアナウンスはプレー前に「84番は無資格」っていうだけ。
ディフェンスの選手が聞き逃したり、あれ誰だろ、84って言った? 81って言った? とかって確認してる間にプレーを始められちゃったら、すごい混乱するよね。
もう、意味がわからないです…
そんなわけで、さすがにこれは難しすぎるだろってことで、翌年にすぐ禁止になった。
でも、通常は有資格の選手をインテリアラインとして使うのは禁止されてないよ。
そして2018年、こんどはレイブンズがちょっとわかりにくいフォーメーションを使った。
LOSに並ぶOLの間を1人分あけて、ギリギリLOS上にならないところまでTEを上げてセットさせたんだ。
ぱっと見はOLがたくさんいるーっていう形になる。
でもこのフォーメーションには、有資格なのにこのプレーだけ無資格とか、無資格だけどこのプレーだけ有資格とかっていう、審判に申告が必要な選手はいないんだ。
OLがパスプロをしてる間を、QBの横にいたRBとかがパスコースに出て行くっていう普通のプレーと、理屈としては同じなんだね。
えー、でもこんなところにいたら普通にパスプロするって思うですよー!
そうだね、ルールの隙をついたプレーっていうのは、選手にとっては正直なところ初見殺しでしかない。
新しいプレーを生み出すのと、それを学習するのと、永遠のいたちゴッコなんだぜ。

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