NFLのFan Centric Marketing戦略ってのを聞いてみた件

NFLのFan Centric Marketing戦略ってのを聞いてみた件

少し前の話なのですが、メモが出てきたので。
NFLがいかにファンを中心として大切にしてマーケティングをしているか、その結果成果が出ているか、みたいなお話(自分語り)を聞いたのです。

要はいろんな窓口からバラバラに集められて溜まっているデータを一つにまとめてゴリゴリ分析したら何かヒラメキがおりてきて儲かるかもよ! そのためにこのツール使うと良いよ! ってアドビ様が売り込んでくる会だったのですが、題材と話し手がNFLだったのです。

■場所

@Adobe Experience Forum
テーマは、顧客と企業のつながりを強化する、LTV最大化のためのCXMとは、みたいな感じ。イシキタカイ。
その中でNFLのマーケティングがやっていることを話すというので行ってみた。

■会場IN

WEBマーケティングとかツールとかの集まりって、だいたい砕けた感じでわいわいしてるんだけど、さすがadobe、珍しくダークなカラーのスーツのビジネスのパーソンばっかり。そして静か。
公演が始まる前にも、会場内でパソコンはなるべく使うな、スライドの撮影禁止、もちろん勝手に撮ってSNSにアップしたりしたらゆるさんぞ、というアナウンス。なかなかである。実際パソコン開いてる人なんてほとんどいない。NFLも知らないだろうし、今日の話通じるんかいな。っていう雰囲気で始まりました。

■まずはNFLとはなんぞや、から

会場に集まっているのはおそらく、自分たちのビジネスで抱えてるデータをどう活用したら良いんでしょう、どうやってデータ集めたら良いんでしょう、とか考えてるような人たちなんでしょう。
でももちろんNFLなんてマイナーなスポーツのファンなんてほとんどいないよね、というスタンスで話がスタート。
なので、まずはNFLそのものの説明から。
最初にNFLイメージビデオが流されました。最初に登場したのが、ラムジー、ラック、ニュートン、ワットで、あー開幕したころが懐かしい、なんて気持ちになりつつ。
次にNFLの構成が説明されました。32チームは独立しており、でも全チームがNFLという組織の株主にもなっていて、主な収入源は放映権の販売とチケットの売上、といったようなこと。
実は日本でもNHKのBSやDAZNで見られるんですよ、とか売り込みつつ。

■NFLのマーケティングの基本方針

そしてマーケティングの話に入ります。

NFLの基本的な方針としては、長期間にわたって顧客を育て強い関係性を持ちたいですという、いわゆるLTV重視のもの。というよりは文化を育む姿勢に近いのかも。
そのために、顧客それぞれのNFLへの関心の高さと親和性に応じて、適切な段階で適切なアプローチをする。
最初は無料のコンテンツに触れてもらうところからで良い、最終的に年間1万ドルのシーズンチケットを買ってもらえる人も生まれるけれど、もちろんすべての人がそうなるわけではない。
なので、それぞれの顧客にどのように接するかを決めるために、それぞれの顧客がどのような人なのか、どの程度NFLに入り込んでいるのかを理解しなければならない、と。

そのために、NFLが入手することのできる顧客のデータを収集して分析する必要を認識した、ということでした。

■NFLのFan Centric Marketingの構築過程

基本方針に沿ってNFLがまずしたことは、データ集めとその統合でした。
2013年にプロジェクトが本格始動。最初に着手したのは、NFL.com、NFLshop、gamepassなどがそれぞれで持っていた顧客データを集めて、統合できるよう洗うところから。
2014年、データ同士を関連づけられるように。そのためにツールなどの導入が必要だし、投資もした、と。この辺でadobeも登場してたみたいですが。
2015年からはそのデータを本格的に活用し始めます。
そして2016年には顧客ごとのパーソナライズと、それに合わせたプロモーションの打ち分けを開始。これ以来プロモーションの効果が劇上がりだったんだよ、というのがこの後で事例として話されることになります。
2017年にはさらに、データ収集とそれを活用した配信において、リアルタイム性を強化。各チームとのデータの共有も密にすることで、ファンとのコミュニケーションも増えたとのこと。

それにしてもこれらの話をしている間、なぜかドルフィンズ時代のキコが抜かれてSFの選手がタッチダウンしてる画像が背景になっていたのがアレでした。

そんなこんなで今では、
Gamepass
Fantasy
nfl.com
各チームのweb site
NFL mobile
dazn
Ticketmaster
Sunday ticket
NFLshop
Madden
などがデータ連携されているそうです。なんとデータソースは100以上。ってかマッデンまで入ってるのかよ、っていう感じ。

■データの活用で売上が上がったぜの事例

で、本題はNFLではなくてデータを収集して活用して売上を上げる方法の講演なので、その事例に話は移ります。

ユーザーの属性や行動を分析しているうちに、新しい顧客増が浮かび上がってきた、と。
すなわち、NFLのファンってわけじゃなくて、自分の好きなチームのファンって人が多くね? 好きなチームの情報にだけ触れてる人が多くね? ならそのチームの情報だけ配信した方が機嫌よく過ごしてもらえるし、売上も上がるんじゃね? という仮説ができたそうです。

それを検証するために、以下の方法をとりました。
NFL.comの会員登録時に、好きなチームを入力してもらうようにした。
その中でサンプルを抽出して行動を分析したら、確かに好きなチームの情報に多く触れていた。つまり、好きなチームのニュースや試合結果を、自分から見に行っていた。
では好きなチームの情報を中心に配信してあげましょう。メールやポップアップやなんかやかで。
すると、アクセス頻度が9倍に増えたのです。
爆上げ。

これはいけるってんで、今度はアクセス数だけでなく売上を狙います。
すなわち、NFLshopの広告画像の出しわけ。好きなチームのグッズをたくさん見せられるわけですね。
すると売上50%増。
爆上げ。

じゃあgamepassでもやったらどうだろうってことで、入会を促すページの背景をその人の好きなチームの画像にした場合と、一般的なスター選手を並べたような画像にした場合とでABテストをやってみた。すると、好きなチームが背景の画面にしたほうが、購入率15%アップ。
わりと爆上げ。

■さらなるデータの活用で売上が上がったぜの事例

ただ、ここまではまあ当たり前の話でもあります。ユーザーに実際に好きなチームを聞いて、その通りにやってるわけですから。
問題は、それに答えてくれる人が少なかったということ。NFL.comは別に会員登録しなくても使えるわけです。なので、全体の5%くらいしか登録してくれない、つまり好きなチームを教えてくれない。
残り90%以上の人についてはわからない。わかればもっと売上あげられるのになーっていう。

そこで、行動データから推測することにしました。
そのユーザーが多く情報に触れているチームを、そのユーザーの好きなチームだと仮定しちゃって、先ほどの広告や画像の出しわけをしちゃおう、という方法です。
すると、gamepassの事例では、推測された好きなチームの画像を背景したら、購入率が14%向上したとのこと。登録フォームで教えてもらった人の場合は15%の向上でしたから、ほぼ同じ効果が得られた、ということですね。

ただしこれはadobeのツールの力ですよ複数のデータソースからの情報を統合してリアルタイムで処理して配信にも反映させないとできないことですよadobeってすごいよね、という宣伝がもちろん入ります。

そんなわけで、いわゆるアドテクみたいな話に落ち着いたちゃったので、そんなに新しい話でもNFL独自のことでもないんじゃないかとも感じなくはないんですが。ともあれ、NFLの情報収集力はすごいぞ、という別のところで感心して帰ってきました。

ただ、僕の体感的にはそんなに精度高くないんですよね。日本からのアクセスだとそんなにデータ取れてないのかな。NFLshopにはいまだにビルズファンと認識されてるらしく、ビルズグッズの紹介メールばっかりくるしね。





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