10.前半2ミニッツと時計が止まるとき [03.試合の流れ]
前後半とも、残り時間が2分になったところで(つまり2Qの残り2分と、4Qの残り2分に)、オフィシャル・タイムアウトがとられる。審判がタイムアウトを取って間を入れるわけ。
どうしてでしょう?
いったんCMでーす((c)タモリ)
ってこと?
おしい、でもだいたいあってる。
マジで?
CMのために試合止めるとかいいの!?
そんで、最後に見せ場をつくるんだぜぃ。
うん、それもまあ間違ってない。
だいたいってことは、ほんとは違うのけ?
だいたいって言うのは、このタイムアウトの意味合いも、時代の流れとともに変わってきたからなんだ。
もともとは、残り2分の時点で、これから先の残り時間は勝敗に直結するから、いったん正確に残り時間をはっきりさせておこう、っていうことでつくられたタイムアウトだったんだよ。
昔は試合時間を計っている審判は、その時間を審判たちだけで見ていた。スタジアムにも試合時間は表示されてたんだけど、それを操作してるのはスタジアムの人で、公式な時計じゃなかったんだ。だから審判は、残り2分になったところで、いったんスタジアムの時計を公式の時計と合わせさせたんだ。
そうしないと、実はもう試合は終わってるのにお客さんがクライマックスだって盛り上がっちゃったり、本当はまだ時間があるのに選手たちが妙に急いじゃったりっていうことが起こると、妙に空気が冷めたまま試合終了ってなるからね。
じゃー、盛り上げるためのタイムじゃないぞ?
でもね、1960年代の終わりには、スタジアムの試合時間表示も審判の操作する公式時計と連動するようになって、時間を合わせるためのタイムアウトをとる必要はなくなったんだ。
だけど、そのころには今度はテレビ中継ってのが始まってた。つまり試合中にCMを流して、それがNFLの収入になってたわけね。タイムアウトではもちろんCMが入る。しかも、残り2分っていう試合終盤のいいところでのタイムアウトだったら、そこでチャンネルかえる人は少ないよね。高く売れるCMの枠を消すっていうのはNFLは嫌だった。だから、試合運営上はもう必要なくなってたんだけど、そのまま残したっていうことみたいなんだ。
ちょっと間があいたほうがテンション上がるし、良いでしょ、って感じだね。
さすが、商売上手でげすなー
でもそのおかげで、最後の2分のための打ち合わせの時間があるわけ。
最後の見せ場になるってことは、つまりこのくらいの時間から、前半(あるいは試合)終了までの間は、それまでの時間帯に増して非常に重要なんだってこと。
ここで時計が止まることを「2ミニッツ・ウォーニング」、ここからの2分間の攻撃を「2ミニッツ・オフェンス」って言ったりするよ。
サッカーでは、プレーが行われていなかった時間を計っておいて、試合の最後にアディショナル・タイムとして追加するね。その分だけ試合が延長されるって感じ。アメフトは、はじめから残り時間を計ってる時計を止めたり動かしたりしながら試合をするから、残り時間が0になったところで終了だよ。試合中に残り時間がいったん減らなくなるのを「時計が止まる」って言う。
だから、2ミニッツ以降は残り時間とともに、時計が動いているか止まっているかということもすごく重要になる。
なんか…難しくなってきてませんか…?
大丈夫、すぐ分かるようになるよ。
とりあえず昔の運営方法の名残のタイムアウトなんだけど、今では「残り2分は見所満載だしドキドキしろよ」ってことだと思っておいて。CMの収入とか大人の話は無視していいさ。
時間の減り方・時計の止まり方はまた後で詳しく説明するけど、ひとまず簡単に。
両チームは前後半それぞれ3回ずつ、タイムアウトを取れる。タイムアウトを取ると時計が止まって、少し時間がもらえる。いわゆる「作戦タイム」ってやつだね。もともとは40秒もらえるんだけど、NFLだとテレビ中継のCMなんかの関係でもっと長くなることもあるよ。実際にはタイムアウト終了時に審判が再開を宣言して、それから25秒以内にプレーをするってことになるから、すくなくとも合計65秒以上あるんだけどね。
その他に時計が止まるのは、
(1)ボール・キャリアがアウト・オブ・バウンズに出たとき
※ただし、前半残り2分、後半残り5分以外は止まらない
(2)パスが失敗したとき
(3)けが人が出たとき
(4)反則があったとき
残り時間が少なくなると、負けているチームは短い時間でたくさんゲインしなきゃならなくなる。だから、たくさんゲインできることが少ないラン・プレーはあまりやらなくなって、パスを投げて一気に進もうとすることが増えるよね。
それから、点をとっても時間がなくなったら試合が終わっちゃうわけだから、わざと時計を止めながらプレーをする必要もある。タイムアウトは3回しか使えないから、時計を止めるためには上の4つのどれかが必要になるんだ。
でも反則をすれば罰退があるから、わざとやるのは無理だね。
オフェンスにけが人がでても、2ミニッツでは強制的にタイムアウトが取られるんだ。もしタイムアウトが残ってなかったら10秒残り時間が減る。けがしたフリして時計止めるなんて奴が出てこないようにだよ。まあディフェンスは嘘けがタイム取り放題なだけどね。
だから、実際に使えるのは(1)と(2)だけど、ラン・プレーでボール・キャリアがアウト・オブ・バウンズに出るのは大変だね。それまでにタックルされちゃうと時計は止まらない。
というわけで、最初からフィールドの端のほうを狙ったパスが増える。捕ったらすぐに外に出ちゃえばいいからね。さらに、(2)パスが失敗したときにも時計は止まるから、捕れなくても時間だけ進んじゃうってこともない。
ディフェンスの方もそれは分かってるから、フィールドの端のほうを重点的に守って、インターセプトを狙いにきたりもするんだ。
もうひとつ、QBがパスをわざと足下に投げ捨てるのもパス失敗の扱いになるんだよ。このプレーはスパイクって言って、2ミニッツではよく使われる。パス失敗だから1回のダウンを捨てることになるけど、その代わりに時計を止めるということだね。
いろんな知恵と技を駆使して、時間ギリギリまで得点を狙おうってわけ。逆に、もうこのまま時間がなくなるだけで勝てるっていうチームは、できるだけ時間を止めないですませようとするんだ。
その辺が、2ミニッツの攻撃の特徴かな。
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